2024年11月11日に開催された「EVM Summit 2024:Bridging Global to Local」において、NERO Chainの創業者兼CEOであるジェイク・ストロースキー氏が、「アプリケーションに力を戻すーNERO Chain」というテーマで講演を行いました。
EVM Summit 2024とは?
「EVM Summit 2024」は、タイ・バンコクで開催されたイベントで、Ethereum Virtual Machine (EVM)と東南アジアにおける成長を続けるブロックチェーンエコシステムをテーマに、グローバルリーダー、起業家、開発者、投資家が一堂に会するイベントです。
KX Venture Capital、HashKey Capital、L2IV、Ethereal Venturesが主催したこのサミットでは、パネルディスカッションや特別講演が行われ、EVMの役割、レイヤー1・レイヤー2プロジェクト、そしてWeb3分野での革新的な技術や取り組みが議論されました。NERO Chainをはじめ、多くの注目プロジェクトが紹介され、未来の技術革新についての洞察が共有されました。
講演された内容について
皆さん、こんにちは。NEROのジェイクです。本日は、NEROのアーキテクチャが「Blockspace 2.0」を通じて、どのように開発者に力を与えるかについてお話しします。
NEROは、カスタマイズ可能なアプリケーション環境を備えたEVMチェーンです。一見するとシンプルな仕組みに見えるかもしれませんが、アプリケーションが最初に選んだブロックチェーンを離れる理由という重要な課題に取り組んでいます。
約99%の場合、その原因はインフラとアプリケーション間の経済的な整合性が崩れることにあります。アプリケーションが成功すればするほど、この整合性の欠如は拡大し、インフラがアプリケーション以上に価値を吸収してしまうのです。
例えば、UniswapはEthereumに640億ドルもの価値をもたらしましたが、トークン保有者が享受したのはそのわずか1%程度です。このような状況は、最近のUniChain発表にも見られるように、流動性の分断などの問題を引き起こします。開発者は、サードパーティのブリッジへの流動性移動に反対しており、Ethereumユーザーに悪影響を与える可能性が指摘されています。
さらに、アプリ専用チェーンやL2を構築する際のコストも大きな課題です。また、独自チェーンを構築する場合には、Roninブリッジの6億ドル規模のハッキング事件やDeFi Kingdomsの事例に見られるように、セキュリティリスクも伴います。
加えて、アプリケーション開発者が経済的なインセンティブを求めてチェーン間を移動する「チェーンホッピング(チェーンからチェーンへの乗り換え)」も問題となっています。NEROはこれらの課題に対して、長期的な経済的整合性を優先するアプリケーション環境を提供します。
NEROでは、トランザクションのサプライチェーン全体で価値を上流にシフトさせ、MEV(最大抽出可能価値)を削減し、アプリケーションが独自にトランザクションをシーケンスできるようにすることで、エコシステム全体をシンプルにしています。
これにより、トランザクションの3分の2以上がプライベートネットワーク内で処理される現在の「サプライチェーンのスパゲッティ状態」を解消します。
NEROのPaymasterで提供する解決策
NEROのPaymasterはいくつかの機能を備えています。
- ガストークンの受け入れやマークアップをリアルタイムでカスタマイズ可能
- アドレスや時間帯に応じたガス料金のスポンサー設定が可能
- 料金モデルや顧客獲得戦略の柔軟な実験環境を提供
これにより、画一的なブロックチェーンパラメータに縛られることなく、アプリケーション固有のニーズに応じた柔軟な運用が可能になります。従来、多くのブロックチェーンは、高コストやインフラ整備のためのインフレトークン依存によって、多くのアプリケーションを排除してきました。NEROは、ガス代の感度分析を通じて、適切な範囲内でガス代を最適化し、インセンティブと需要の調整を可能にしています。
トークンのユーティリティとポジティブなフィードバックループ
NEROは、アプリケーションがトークンのユーティリティと需要を創出することを可能にし、ポジティブな循環を実現しています。
- トークンの需要増加による価値の向上
- トークン価格の上昇に伴う収益拡大
- 拡大した資金により、ユーザー獲得の予算を増加
- このサイクルがエコシステム全体の長期的な成長を支援
NEROの利点
- 開発者によるカスタマイズ可能なガス代ポリシー
- NEROネットワークとの収益共有
- ガス代のリアルタイムな実験と調整が可能
- MEVとガス料金の変動性を削減
- トークンのユーティリティを向上
- ガス代を調整しつつ、ビジネスモデルに最適な価格を見出すことが可能
NEROの拡張性
NEROの委託型ブロックスペースモデルは、Avalancheやその他のEVMチェーンと統合可能です。この柔軟性により、NEROは他のエコシステムにおけるブロックチェーンサービス(SaaS)として機能することができます。
Blockspace 2.0への移行
従来のブロックチェーンでは、ガス料金が固定されていることや、その変動性が高いことが一般的でした。NEROの「Blockspace 2.0」は、柔軟性やカスタマイズ性、ガス代の最適化を導入し、ブロックスペースを静的なリソースではなく、コモディティとして扱います。
私たちのモットーはシンプルで「あなたのユーザー、あなたのルール」です。
DEMO、Paymasterの実演
- トークンの作成またはインポート
- トークンをPaymasterに追加
- ガス代をリアルタイムで設定
- Wallet SDKを通じて、選択したトークンでユーザーが支払いを行えるよう設定
このモデルにより、料金構造やユーザー行動の実験が可能となり、より細かく効果的な料金戦略を実現できます。
NEROは、開発者とユーザーのインセンティブを整え、トークンのユーティリティを向上させ、トランザクションの経済構造を簡素化します。実験と統合を通じて、NEROは持続可能なブロックチェーンエコシステムを実現する道を切り開いていきます。
講演で質問された内容について
トークノミクスと価値の蓄積
質問: NERO Chainは、アプリケーション開発者がトークノミクスを整え、自分たちのトークンで価値を蓄積するのをどのように支援しますか?また、なぜ既存のトークン(例: ETH)を利用しないのですか?
回答: 新しいユーザーは、価値の蓄積よりもユーティリティ(使いやすさ)を優先することが多いです。NERO Chainは、アプリケーションが独自のトークン需要を創出できるようにし、ガス代のバーン(焼却)などの非効率的なモデルから脱却します。このアプローチにより、長期的な価値の蓄積を可能にし、アプリケーションとそのユーザー間のインセンティブを調整します。
混雑したエコシステムでの採用
質問: 新しいチェーンやトークンが増え続ける中で、NEROはどのように差別化され、ユーザーに選ばれるインセンティブを提供しているのでしょうか?
回答: NEROは、既存のトークンを持ちながらも活用の幅が限られているコミュニティを支援することに注力しています。開発者が実験やカスタマイズを行えるツールを提供することで、実際のユースケースを引き出し、トークンの採用とエコシステムの成長を促進するフィードバックループを作り出します。
カスタムトークンの利用と評価
質問: NERO Chainでガスとして利用するカスタムトークンの価値はどのように決定されますか?
回答: トークンの評価は、オラクルによる参照価格や手動で設定された価格を基にすることが一般的です。NEROのシステムではマークアップを動的に調整でき、開発者がユーザー行動に基づいて最適な料金を設定できます。これにより、顧客を失うことなく収益を最大化するバランスを取ることが可能です。
モジュラー型ブロックチェーンアーキテクチャへの統合
質問: NERO Chainは、スタンドアロンのチェーンとして設計されていますか?それともモジュラー型ブロックチェーンエコシステムに統合可能ですか?
回答: NEROは両方の役割を果たすことができます。モジュラー型のスタックにスムーズに統合でき、Avalancheのサブネットなど、他のチェーンにSaaS型のPaymasterモデルを提供することも可能です。
初期の実験フェーズ
質問: NEROのメインネットローンチではどのような目標がありますか?
回答: メインネットの最初の3か月間は、実験に重点を置きます。この期間中、開発者はトークンや料金モデルをテストすることができ、ユーザー行動の洞察を深め、インセンティブを効果的に整えることを目指します。
相互運用性とガス抽象化の促進
質問: NEROは、(例: 「スーパーチェーン」のような)相互運用性の基盤技術スタックの一部になることができますか?
回答: NEROは「ガス抽象化」ではなく「ガスアグノスティック(中立的)」な仕組みで動作します。これにより、アプリケーションが成功するにつれて需要が自然に成長する自己持続型のモデルを実現します。この仕組みはチェーン間のインセンティブを調整し、NEROを相互運用可能なエコシステムの重要な要素とします。
ユースケースの拡大
質問: NEROは、十分に活用されていないトークンを持つコミュニティにどのように対応していますか?
回答: NEROは、ガス代モデルの実験やクロスプロモーション、新たなユーティリティの創出を開発者に提供します。これにより、これまで活用の場が限られていたトークンが新しいユースケースを見つけ、コミュニティ内での成長とエンゲージメントを促進します。