幅広い用途に使われるステーブルコイン
英大手スタンダード・チャータード銀行(SCB)は、機関投資家向けの暗号資産(仮想通貨)取引を提供するZodia Marketsと共同で、ステーブルコインに関するレポートを発表。近年、仮想通貨取引以外の用途にステーブルコインが使用されるケースが顕著に増加しており、「仮想通貨初のキラーアプリ」となる可能性が高いと指摘した。
レポートによると、ステーブルコインは元々、中央集権型取引所(CEX)上で、仮想通貨の取引や貸付、借入を目的として使用されていたが、近年は仮想通貨に関連しない「その他」のユースケースが「安定的かつ構造的に成長」。すでに「その他」の取引はステーブルコイン取引全体の約半分を占めるようになったと指摘した。
その中でも特に、従来の金融(TradFi)で提供されている米ドル建の貯蓄や取引、米ドル建のクロスボーダー取引などに、ステーブルコインが使用されている。
TradFiの用途に使用される理由
レポートは、TradFiと同様の用途におけるステーブルコインの使用が増加した重要な要因の1つは、現在の世界金融インフラの限界に起因していると強調した。
従来のシステムで中核的な役割を果たすコルレス銀行の数は、2015年以降、減少傾向が続いている。
SWIFTとコルレス銀行の間で作業が進行中だが、金融安定化理事会(FSB)の2024年の進捗レポートでは、世界レベルでコストは改善されておらず、小売決済の速度は2023年以降低下し、特に低中所得地域の中小零細企業ではアクセスも減少したことが示された。
また、ホールセールFX決済のネットワークであるCLS決済(2002年設立)は、世界の通貨の10%にあたる18種類の通貨のみサポートしている。なお、これらの通貨は世界の取引量の80%を占めるが、残り90%の通貨をネットワーク化できるかは疑問視されている。現在のペースでは、その作業には約200年かかるとレポートは指摘した。
さらにこのシステムにおける決済手数料は、多くの場合、「先着順」の原則に基づいた価格時間ベースで管理されており、多くの顧客にとって不透明であり、タイミングの不確実性という問題も抱えている。
ステーブルコインはインターネット上のお金
一方、ブロックチェーン上のデジタル資産によるトランザクションの仕組みは、大きく異なる。
ガス料金(手数用)をより多く支払うことで、顧客はより速い決済を選択することも可能で、取引には透明性がある。
ステーブルコインはインターネット上の貨幣の表現であるため、コルレス銀行システムを使ったSWIFT送金にかかる日数よりも、Eメールに近いスピードで米ドル資産の国境を越えた送金が可能になる。
新興市場とステーブルコイン
Castle Island Venturesらによる新興市場とステーブルコインに関する共同レポート(2024年9月発表)によると、調査対象となったブラジル、トルコ、ナイジェリア、インド、インドネシアでは、ステーブルコインが単なる取引の担保から、「汎用的なデジタルドルの手段」へと進化していることがわかった。
ステーブルコインは、国際決済や貿易決済、給与支払いや送金の手段として採用されており、仮想通貨取引以外の一般的な用途としては、通貨の代替(69%)、商品やサービスの支払い(39%)、国境を越えた支払い(39%)が挙げられた。
また、回答したユーザーは「信頼性が低くアクセスできない可能性がある」銀行口座に頼るよりも、自身で直接、管理/保持できるステーブルコインを重視していることが明らかになった。
成長の可能性
レポートは、今後ステーブルコインの採用が大幅に増加し、将来的には米国のM2(現金と預金の合計)取引の10%を占める可能性があると予測している。
現時点では、ステーブルコインは米国のM2取引のわずか1%、またFX取引のわずか1%に相当する規模に過ぎないが、このセクターが合法化されれば、各指標で10%への移行が実現可能になると、SCBは主張する。
バイデン政権下では三つの法案が提出されたものの進展はなかったが、次期トランプ政権では米国におけるステーブルコイン規制で大きな進展が期待されると、レポートは指摘。「仮想通貨取引のユースケースより安定しており、成長が速い」TradFi様のステーブルコイン採用が拡大し、その時価総額が10倍に増加する可能性の根拠として示した。
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