*本レポートは、Superteam JapanのHisashi Oki (大木 悠)氏が、CoinPostに寄稿した記事です。
ソラナで採用されているDAOガバナンスの種類
どうも、ソラナのSuperteam Japanの大木です。
日本ではDAO(自律分散型組織)に関する法整備が進み、デジタル大臣の平氏をはじめ多くの政治家の方々、企業や地方自治体がDAOに興味を持っています。
私は、この熱量を日本だけにとどめておくのはもったいないと考えています。ソラナというグローバルに通じる大きな箱を使って、日本発のDAOに関するアイデアを世界に発信していくべきたと思っています。
今回は、ソラナにはそもそもどんなDAOのガバナンスのタイプがあるのかを紹介したいと思います。一言でいって、グローバルでは新しいガバナンスのあり方に関するアイデアに飢えており、日本が存在感を発揮する余地がかなり残っています。
コミュニティトークンDAO
プロジェクトが発行するトークン=ガバナンストークンを保有することで、今後の方針を決める投票や提案を行う方式を指します。一番スタンダードなガバナンス方法ですね。
ソラナでは、Bonk、Marinade、Mango、Jito、Metaplexなどが例に挙げられます。
Jitoの事例
MEVの報酬分配を受けられるリキッドステーキングプロトコルのJitoは、RealmsというSolana系のガバナンスツールを使っています。JIPから始まる提案に対して、JitoのトークンであるJTO保有者が投票をします。
最新の提案「JIP-7」では、Jitoのリステーキング関連プロダクトの開発を手掛けるNCNに200万JTOをJito DAOから捻出しても良いかというものでした。結果は、99.9%のYes投票で可決されました。
クアドラティック (Quadratic)
民主主義の原則は一人一票です。「この候補者も支持したいけどあの候補者もいいなー」という状況があったとしても、どっちかに選んで投票しなければなりませんよね。クアドラティックは、トークン保有数に応じてクレジットが与えられ、自分の興味関心に応じて複数の選択肢に重み付けした票を入れることが可能な仕組みです。
クアドラティックはなぜ重要なのか?トークンを大量に保有する「クジラ」に対抗し、少数派の意見を保護するためです。
実装例
ソラナでは、SNS(Bonfida)、Civic、Pollなどが例に挙げられます。
例えば、.solのドメインサービスを手掛けるSNS(旧Bonfida)は、クアドラティックにDAOガバナンスの未来があると信じ、Solana財団と共同で開発者に対してグラントを出しました。
グラントを獲得したのは、シビル攻撃耐性のあるID作りを手掛けるCivic。もう実装できる状態だそうです。
NFT DAO
プロジェクトが発行するNFTを保有することで、今後の方針を決める投票や提案を行う方式を指します。ソラナでは、MonkeDAO、Bonke DAO、Degenerate Trash Pandsなどがあります。
MonkeDAOの事例
例えば、ソラナの老舗NFTであるMonkeDAOは、NFTを使った投票を頻繁に行なっています。
最近は、MonkeDAOのコミュニティのリーダーを決める選挙の開催を一年に一度にしないかという提案が投票にかけられました。
NFTは、日常的に使う機会が数ないことから、NFTをLedgerなどハードウェアウォレットで保管する人は少なくありません。その場合、いちいちハードウェアウォレットに接続するのが面倒臭いため、該当するNFTで投票する権利を別のウォレットに委任することができます。これは「デリゲーション」と呼ばれています。
MonkeDAOのガバナンスサイトには、デリゲーションの仕組みがしっかりと説明されています。
フタルキー (Futarchy)
経済学者のロビン・ハンソンが提唱した理念で、DAOで出された提案を、賭け市場= Prediction Marketに出し、マーケットの原理で判断することを指します。投票行動とは、提案AとBがあるとして、それぞれのトークンの価値がどっちが上がるかを考えて取引することになります。
重要性と実装例
なぜフタルキーが大事なのか?これは投票者に対する疑念があります。全ての投票者が、提案に関する全ての情報を網羅し合理的に判断できるわけではありませんよね。人間は感情的な生き物です。不合理であっても家族や友達に投票します。ロビー活動が行われるのは当たり前で、賄賂を渡されるケースもあります。フタルキーは、代わりにマーケットに判断を任せようとしています。
ソラナでは、MetaDAO、Drift、Deanslist、Future、Ex などが挙げられます。
MetaDAOは、フタルキーの原理を使った投票ツールを提供しています。例えば、先日出された「Q3のロードマップを承認してください」という提案は、マーケットにおいて賛成の価格が反対の価格を上回ったため、可決しました。
ガバナンスのアイデアで世界を取りにいこう
クアドラティックやフタルキーは、一人一票(一トークン一票)の従来のガバナンスモデルの代替となるアイデアですが、どちらもまだ日が浅いです。この領域は、まだブルーオーシャンです。
実際にソラナのグローバルハッカソンの主催組織であるコロシアム担当者から、「DAOツールより、新しいガバナンスモデルを探している」と言われてことがあります。
日本には昔からDAO的な社会や考えがあったとしばしば聞きます。現段階ではまだ雲をつかむような話かもしれませんが、日本の価値観や文化に基づいたガバナンスのアイデアが世界をあっと言わせる日が来ると思っています。和のガバナンスで、西洋のガバナンスの常識を覆していきましょう。
次回は、ソラナのグローバルハッカソンのDAO/NetworkStateで入賞したチームを分析し、最新のトレンドをお伝えします。